最大級のアニソンバトルに出てきた話

イベントレポ

 先日、日本最大級のアニメソングでダンスバトルをするイベントに出場してまいりました。

 ブログを書き始めてからというもの、あんまり大雑把な表現を使わないように意識しているのですが、このイベントに出場した感想を言わせてください。

ヤバすぎ

 もうね。日本語という世界有数の難解言語を駆使しても表現しきれないんですよ。間近であの熱気と音楽に触れていただきたい。バトラー同士のコミュニケーションが飛び交うあの瞬間、観客の歓声で揺れるフロア。全てが筆舌に尽くし難い、とんでもないイベントでした。大SNS時代のこの世の中ですが、どう考えてもWi-Fi越しでなく肉眼で観ていただきたい。そして気づいていただきたい。

なんと自分は視野が狭かったのかと。

今回はそんなヤバすぎたアニソンバトルイベントについてのレポートでございます。

エントリーから戦いは始まっている

 アニメソングでダンスバトルをする、いわゆる「アニソンバトル」というのは私もちょくちょく出場をしているのですが、今回のイベントはそのアニソンバトルの中で最大規模のものです。定期的に開催されているようでして、今回はその10周年記念回とのこと。今回は入場規制等もとっぱらわれて参加人数は過去最大になると予想されていました。

 このイベントの名物とも言えるのが、「バトルエントリーが光の速さで埋まる」というもの。通常のロックダンスバトルなんかはどれだけ人気イベントだとしてもさすがに2週間程度はエントリーに猶予があったりするわけですが、このイベントは違います。

1分でエントリーが埋まります。

 本バトル常連者からは「エントリーの練習をしておいた方が良い」とまで言われるほどです。ジャニーズのライブチケット並みで誠に草。

 というわけでエントリー開始数分前にエントリー情報をコピペできる状態で正座で待機していた私。開始時刻と同時にエントリーサイトにペーストをかましていきます。1分以内にエントリー完了。エントリーを終えて数時間後、イベントサイト内のエントリーリストが更新されたので状況を確認。

 20チーム以上がキャンセル待ちの状態でした。え?怖すぎん?エントリー開始今日だよね?イベント明後日とかじゃないよね?

 さらに私たちのチームは130番台。え?エントリー1分以内でこれ?え?怖すぎん?Twitter(現X)を確認すると、エントリーできたでなかったなどの阿鼻叫喚の様相を呈するタイムライン。エントリー時点で熱気がヤバすぎてもはや引いていました。

当日の話

 本イベントの開催地である川崎のCLUB CITTA’(クラブチッタ)は、ダンサーなら誰もが踊りたいと思う”聖地”のような場所です。そんな場所で爆音で響き渡るアニソン、ボカロを耳にして鳥肌が立たないわけがないのです。普段YouTube越しでしか聞かないような曲がフロアの壁と床と空気を揺らしていて、それに焚きつけられた人々が声を上げる。私が思っていたものとは違う”聖地”が得も言われぬ緊張感を放って目の前に存在していました。そんな中で自分たちのバトルがその会場全員の視線をキャッチするかもしれないと考えるだけで興奮していました。

 2回に分けて行われる予選を勝ち上がって本戦に進出するルールなのですが、その全てを対面バトルで実施するとのこと。個人的にはダンスバトルである以上、やはり対戦相手がいる状態で踊るほうが気持ちが上がるので私は好きです。1次予選は予選ブロックが4つに分かれており、対面バトルをジャッジがチームごとに得点を付け、点数上位8チームが予選を突破するというものです。各ブロック8チームが突破するため全体としては32チームが突破できるというもの。160組が出場しているので、全体の80%はここで脱落するという狭き門。狭すぎて笑えないのよ。

1次予選

いざ我々の出番。

 私の出た曲はクソ速かったです。

 どれくらい早かったかというと、まずフィッチウェイはできない(謎基準)。大振りの技は無理すぎる。ストップアンドゴーとかは体のノリを全消しして手先だけでやるのがやっとです。まぁほんとに絶妙な、いや、微妙な予選ムーブをカマしてしまったわけですが、相方のパワー万振りのフルアウトと流れるようなフロアムーブに助けられました。

 出番が終わって結果を待ちます。1次予選が終了するまでとてつもない時間がかかりました。赤ちゃんが生まれてからつかまり立ちできるくらいには時間がかかったと思います。

 この結果発表を待つ時間は本当にしんどいですよね。どれだけ自身があっても「落ちてたらどうしよう」という疑念が払拭できないし、落ちていたときに傷つかないような準備もしなくてはならないし、上がったら次の作戦を考えなきゃという気にもなるので、頭の中が結構とっ散らかった状態になるんですよね。更に私たちはA~DまであるブロックのうちDブロックで予選を踊ったので、発表順としては最後のほうなわけです。それまでのA~Cまでの通過者のことなんか気にしてられない状態でした。

Dブロックの結果順位発表が開始されました。

1位は違う、

2位も違う、

3位にも呼ばれず、

 私の理想の展開としては、1次予選は4位以上の上位通過が目標でした。後に触れますが上位通過で後の展開を有利に進めることができるからです。

4位でもない。

私の理想は叶わず、こうなってくると色々厄介なのです。

~心の中~
 というかこれは予選落ちなのか?それはクソおもんないぞ?いや私も絶妙に微妙なムーブかましたよ?正直出し切れなかったよ?でもさ、他の人に比べたらロッキングはちゃんとしてたと思うよ??いや正直トゥエル、ロック、ポイントにはかなり自信あるよ?自信ニキだよ?

 「5位通過、『MAGNOLIA』~!」

~心の中~
 はい、呼ばれました。ありがとうございます。ちゃんとロックダンスしててよかった。やっぱわかってくれる人はちゃんと見てくれてるな。えっへん。

 と自分自身で機嫌を取っていましたが、内心嬉しすぎて膝ががくがく震えていました。呼ばれた瞬間に相方と「うおー!!!」って言って抱き合っていました。なにこいつら?優勝したん?ぐらいの喜び方でした。まだ1次予選終了したてやで?

2次予選

 向かうは2次予選。お相手は違うブロックの4位通過のチーム。先述した、上位通過したい理由がここにあります。4位以内で通過をしておけば、順位が下の相手、言い方を考えずに言えば、評価が自分たちのチームより格下の相手と対戦できることになりますあくまでブロック内の相対評価なのでか順位参考にしかなりませんが1位通過者は8位通過とバトル、2位は7位と、3位は6位といった具合に対面カードが決定するので、勝率面を考えるのであれば4位以内が理想でした。5位通過の私たちは格上の4位相手とやりあうことになります。2次予選は2つのブロックにジャッジが3人ずつ分かれて、対面バトルで勝敗がつきます。ここからガチンコのダンスバトルになるわけです。

 2次予選がスタートして私たちの出番となりました。まずは相方がバチっとワンムーブ仕上げてくれました。。後ろから見てて思うのですが、ホントに場が締まるムーブするなぁと心強い気持ちでいっぱいでした。私のムーブってわりと散らかしてしまうことが多いので(本人はいたって真剣)、こういうわかりやすくパワーもあって冷静に処理できる相方に助けられていることが幾度とありました。ほんとシェイシェイ。

 私の出番となり曲が変わりました。そう、かかっちまったんです。「トウキョウ・シャンディ・ランデヴ

 この曲は一度踊ったこともあったので曲の予習はばっちり。ただ、ネットで色々といじられていることもあって、会場の雰囲気として「さぁ、どんなムーブしてくれるのかな?」という若干の期待とハードルが上がっている感覚を受けました。しかし、やることはひとつ「全力で感じたように踊ること」でした。普段は論理的な感じでレッスンログとか残してますが、本番はその練習の成果を楽しむために発揮したいと考えています。本番は結構脳筋なのです。

 まずはルーティンから。このルーティンは曲で出すかどうかを決めることもありますが、ほとんどはここで絶対勝ちたいってときに使うようにしています。それくらいの火力とスピード感を秘めている自慢のルーティンです。このルーティンの勢いを使って「ハチャメチャに飛び出してやる!」とはならずまさかのウォーターゲート。しっかり腰据えて曲に乗って落ち着いていました。でも今動画見てて思ったけど、ウォーターゲートがめっちゃ強いのよ・・・テンションが抑えられてなかったでしたね。そこからフロアを大きく使うように歩き回りながらペーシングしたり、しっかりフロアもはいったりロックやポイントで止まったりと、音楽にノリながらもバランスのいい仕上がりでフィニッシュ。個人的にはもうちょっと精度高く踊りたかったです。

 結果は3-0で勝利。結果だけ見ると余裕のように見えますが、こっちのミスが少しでもあればこの結果は大きく変わっていたと思います。

本戦Best16

 そして本戦ベスト16へ。この時点で朝9時集合から17時ごろになっており、待ち疲れがピークを越えていました。つかまり立ちを覚えた赤子も今頃は高校受験を控えて親とギクシャクしてるくらいに長い時間が経っていました。

 お相手は別ブロックの1位通過のチーム。ベスト32の結果次第ですが、上位通過さえできていればここまでしんどい相手に当たるのももうちょっと先だったかもしれませんね。しかもお相手はこのイベントで優勝経験のあるチームとのこと。このイベントの流れや空気感を把握しているわけです。こちらはこのイベント初参加で、今期のアニメなんて当然の如く追ってないわけですから、対策すらできていない。苦しい戦いになるのは始まる前から分かっていました。

 バトル開始と同時に我々から先攻をとります。後攻のほうが有利だとも言われるダンスバトルですが、正直私はそんなことはないと思っています。どうせ曲も知らないし、待つことで難しい駆け引きを要求される可能性があるので、だったら自分たちでこのバトルの基準作っちゃおうっていう腹でした。

 相方のファーストムーブ。やはり冷静かつパワフルに時にライブ感も含みながら場を対処。とんでもなく会場が盛り上がるということはないですが、しっかり返さないと空気が崩れないようなクオリティなので、お相手が相当本気でないと抜かれることはないと思っていました。しかし、私は知っていました。”相手次第で勝てそう”という考えはお祈りプレイみたいなもんで、自分たちで勝利をつかみ取りに行けないということを。そういう気持ちの時に限って、お相手さんが相当調子が良かったりするわけです。

 お相手のB-boy二人組はシンプルでわかりやすいトリックを音に合わせて要所要所でしっかりと決めてきて会場を盛り上げてきました。私の目線として相方は全然負けてないのですが、流れは完全に相手チームにあるように感じました。

 そのような空気を帯びながらセカンドムーブ。私がやるしかないと決意を固めました。曲はやはり知らなかったのですが、ロッカーとしてかなり踊りやすいアフタービートが強めかつ楽器とボーカルのバランスが非常に良い曲でした。テンポもゆったり目でロックダンスするにはうってつけといったところ。ここで我々はルーティンを使用。長年チームでやってきたのでたくさんルーティンのストックはあったのですが、このイベントに向けて作った初出しのルーティンを披露しました。ロックダンスをしっかり踊れる、かつ、セッション感も高めな仕上がりであり、これが本番でどう見えるかわからなかったのですが、動画で見返してみたら曲の感じと相まって非常に効果的なルーティンであったと感じています。

 ルーティン後、私がそのままムーブを継続。しっかりと一つずつロック、クロスハンド、ペーシングを置いてくるような立ち回り。曲がサビにさしかかりそうだなというカンをもとにスクーバーホップから足を引っかけてジャンプ後、謎の後ろのけぞりジャンプ、そして極めつけのスピンニーダンを実施しました(何が起きてるのかよくわからない)。曲に合わせることができたので会場は沸いてくれました。そこからまたしっかりロックダンスしつつも、足技を駆使して体を無理くり背中を使って引っ張る動き(何が起きてるのかよくわからない)をいれたり、ベーシックとサプライズな動きをバランス良く入れ込めた気がします。アフタービートがしっかりしててローテンポな曲は、自分が気持ちよくなるだけで見た目が地味なムーブになりがちなのですが、そこをジャンプしたり変な動きを入れ込めたので、ちょうど良い塩梅のムーブになったのではないでしょうか?

 お相手のムーブ。ファーストムーブの方と同様に、ポイントをしっかり押さえてパワームーブをしっかり決めてきます。この安定感が怖すぎる。会場の空気も完全に相手側の流れといった具合。負けを確信するような内容でした。

 運命のジャッジ。本戦は8人のジャッジが良かったと思うほうを上げます。結果は4-4。まさかのドロー。

いや待って?結構対抗できてたんか?まじか?

 とジャッジが挙げた旗を見てその事実を疑っていました。ちょっとダンスを長くやっていると、判定が下される前に結果がどうなるかなんとなくわかるのですが、それが珍しく良い方向に外れました。

 空気こそ持っていかれていたものの、ジャッジは空気だけでなくいろんな要素でこのバトルを見ていてくれていたのだと嬉しく思いましたが、そういった気分に浸る暇はなかったのです。ドローということは延長戦が決定しているからです。延長戦はチームの代表者一人による1ムーブでジャッジが話し合って勝敗が必ず決定するもの。延長戦のルールを喋るMCをよそに相方から「行ってこい」との指示。というか、この指示の有無に限らず私から「出る」と多分言っていたでしょう。本当に冷静に勝ちに行くのなら、曲を聴いてからどっちが出るかを判断するのが一番良かったと思いますが、私がただ単純に出たかったのです。勝つための最善を尽くすこと以上に自分の気持ちに正直でありたかったのだと思います。

 「どうせ先攻で出るから」ということでバトルスタート前からフロア中央に仁王立ちで待機する私。MCや会場がこの私のスタンスに盛り上がりを見せてくれました。この”フロア中央で先攻出ますよ”というのは一種のパフォーマンスだと思ってやっていました。これで会場のボルテージが上がればイベントも楽しくなるだろーなーっていう浅い感情です。ほんとはめっちゃ怖いよ。自分からハードルを上げているようにも見えるし、これでクソムーブだったらダサすぎて見てられないです。でもその逆境がクソ気持ち良いわけです。漫画の主人公になったような気分になれるのです。だから中央で立ち尽くしてやりましたよ。ええ。

かかった曲は鬼速かった。

しかも知らんし。

 リズムもロックダンスするには結構しんどめ。体がはちきれるほど踊りましたが、全力を出し切れないまま。最後にビッグな大技なんか出ろ!という気持ちで両手を地面について足を上げましたが、ただへたくそな逆立ちを披露した人になって終了。お相手はいつも通りの安定感抜群のムーブでしっかり決めてきました。結果はしっかり負け。当たり前だよなぁ?

 バトル終了後、相方と地面でへばりながら、「楽しかったな」と感想を述べ私たちの挑戦は終わりました。

戦略の先の遊びを大事に

 バトル後、相方と話していたのは、「いろいろなダンスがあるな」ということでした。これは一言にいろいろなジャンルのダンスがあるという意味ではなく、スタイル、音の聴き方、表現技法などをひっくるめて”いろいろなダンス”という表現をしていました。今回の我々は、できる限り勝率の高い方法を取れるように「ルーティンはこのタイミングでこれを出そう」とか「曲聞いて勝率の高められるほうがムーブ出よう」というようにバトルを進めていました。このように戦略的にバトルを進めるのは悪くはないのですが、戦略の先の個性や感覚を乗せるのが足りないと感じました。このルーティンはここで出したら効果的だからルーティン後はジャンプとかフロアでソロ入る」。とか、「この曲は自分が行くから2曲目は空気見てルーティン決めよう」って感じで作戦がムーブのバフになるように、かつ、”いろいろなダンス”の中で自分を提示できるようにしたいと思いました。

まとめ

 今回は世界最大級のアニソンバトルの個人的レポートでした。私のムーブは無茶苦茶なこと多いですが、その無茶苦茶がより際立つように実は戦略もちゃんと練っているんですよ。バトルは楽しむことを第一に置いていますが、そのうえで勝つことも目指しています。結果は負けちゃったけど、すごく楽しかったなー。

ご精読いただきありがとうございました。

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