時にはクイックに【8月代講ログ】

レッスンログ

 昨日、ひっさしぶりにレッスンの代講を任されました。いつものプライベートレッスンとは違って初めましての人ばかりなので、どのようにレッスンしようかスタジオ近くのマックでレッスン始まるギリギリまで思考をしていました。どのような人が来てもいいように普段のベーシックプラスアルファとして「クイック」な動きを取り入れることに決定しました。

 今回は自分の意思で間を作り出して、素早い動き、「クイック」を取り入れる方法についてレッスンを振り返っていきます。

クイックな音どりで表現を増やす

 ロックダンスは1カウントごとに動作を連結させて技として成立させることが多いと思います(厳密には正しくないのですがここではそうさせてください)。この1カウント内にその1動作をどのように組み込むかで”間”と呼ばれるものだったり、”緩急”がついたりすると考えています。今回は「クイック」(私が勝手に呼んでいるだけですが)を使うことで、シングルビート(1カウントごと)の踊りに”緩急”や”間”を生み出して踊っている自分も楽しく、見ている人をびっくりさせるアプローチを提案いたします。具体的に意識してほしいポイントは以下の通りです。

動作スタートを遅らせる

 「カウントだの間だの言われてもピンとこねぇよクソ」と思われているでしょうが、実は皆さんもカウントの使い方を無意識に自分で判断して技を繰り出しています。基本的な技であるスクービードゥーを例に考えてみましょう。

トゥエル(1)→ロック(1)→スクービードゥ(2)
※()内は所要カウント数

※左から右にカウントが流れていくと仮定します。

 カウント間には一定の間隔が存在します。この間隔の中でひとつひとつの動作に費やす所要カウントを小さくすることで動きに素早さが出て見た目が変わります。具体的に0から1の間隔のトゥエルの部分を例にすると、何も意識していないと0.5くらいから動き出して1の部分でトゥエルの最高到達点に達するという感じだと思いますが、これを0.9から動き始めて、1.1で最高到達点に達するようにするとクイックな見た目になるということです。遅刻寸前で家を出てチャイムが鳴り終わった瞬間に教室に着席するような感じです。同じスクービードゥだとしても、所要カウント数を削ることで見ている人たちの感じ方が変わると思います。

 また、スタートを遅らせるためその分の余裕が生まれますね。この余裕をどう使うかについても重要なポイントになっていきます。上の例だと、クイックなトゥエルを0.3カウント位で動作を完了させていますが、余っている部分、通称”間(ま)”というやつが大きく生まれるわけです。この間はなにしてもいいんですけど今回は止まっておきましょうか。そしてロックについても同様に0.3、いや0.2くらいまでいけますね。そしてスクービードゥの部分ですがこいつは足上げたり重心を若干入れ替えるので、なんだかんだ1.6くらいかかります。普段より動きが素早いので見ている印象は当然変わるのですが、間が止まっている間が長いのでよりクイックの印象を受けます。動作カウントを削るというのは余った時間を強調することにも繋がるのです。いろんな技にも同じように応用できます。

「戻しを速く」を意識する

 実際にスタートを遅らせるとカウント内に動作を終了させるのが間に合わないというお声を数多くいただきます。何故間に合わないのかお話しを聞くと、皆さん口を揃えて「体がついていかないんです」とのたまいます。シンプルに慣れてないだけだろと言いたくなる気持ちをぐっと抑えて、具体的な解決策を提示します。戻す動作を速くすることをひたすら意識してほしいです。「クイック」と伝えるとすべての動作を速くしなくてはならないのかというイメージになってしまいますが、すべてがクイックだと全体的に雑な仕上がりになってしまいます。ビートの到達点までは速くするという意識を持ちながら動作を丁寧にして、戻しを自分の持てる限りの高速で戻します。これにより、見せたい部分やその音は強調されつつ動作は素早く完了することができます。

余白を自信満々に

 スタートを遅らせることで時間が余りますね。そこで生まれた余白は自信満々に振舞いましょう。間ができると手持無沙汰になって「何かしないといけないのでは」と挙動不審になることがありますが、焦る必要はありません。飛行機搭乗時の荷物検査が終わった後のことを想像してみてください。どんだけ焦っても案内があるまでは飛行機に乗り込めませんよね。有意義にコーヒーなんて飲みながら大きな窓から飛行機がゆっくり動いているのを眺めているあの時間が最高ですよね。クイックで生み出された間で、何をしていいかわからない人はとりあえず自信満々に止まっておきましょう。「自分はこの間を操ってるんだぞ」っていう気概がその人の雰囲気を作っていきます。

ニーズに応えるのは難しい

 ここからは話を変えて、私が代講レッスンするときの考え方をお話ししておきます。

 普段のプライベートレッスンだと、受けてくださる方が固定になってきていることもあり、「この人はロックが好き」とか「この人はフロアが苦手」だとかの趣向がわかるので、レッスンの中で何を伝えるとその人たちの問題解決に繋がるかがある程度想像できます。ご新規さんでも普段の私の投稿を見たうえで来てくださる方も多いので、その人のニーズから大きく外れることも少ないと考えています。

 ですが、代講レッスンとなると、普段教わっている先生のダンスがニーズになっているので、そこを別の人間が問題解決のために教えるというのは不可能に近いわけです。では、代講する人間に与えられた役割とは何なのでしょうか。

 私の結論としては、「受講者の視野を広げること」であると考えています。いつもの先生の動きや考え方を長期的に学ぶことはとても良いことですが、それだけではもったいないと感じています。ロックダンスだけでも踊る人間の数だけスタイルや考え方があると思うので、受ける人たちの視野を広げて「こんなポイントもあるだなぁ」とか「この人のペーシングってこうやるんだ」みたいに普段では想像もつかないようなことをすることが代講するダンサーに求められていると考えています。これで合わなかったら代講なのでその場限りで終了すれば問題ないわけです。リスクが少ないしお互いに良い時間を過ごせるのではないでしょうか。

 そんな思いを胸に、今回はロックダンスがあまり得意でない人でも踊れるように、シングルビートで刻む振付にプラスアルファで「クイック」でリズムに味付けしていくことをお伝えしました。

まとめ

 今回は動作スタートを遅らせて間や緩急を作る方法について解説しました。この素早い動きを、キビキビ動く兵隊さんのように見えることから「ミリタリースタイル」なんていう事もあります。今回はクイックな動き方に重きを置いて解説しましたが、カウントの使い方で同じ動作でも見え方が色々と変わることが少しでも伝われば幸いです。

ご精読いただきありがとうございました!

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