ダンスバトルは技術だけじゃない【will Five】

イベントレポ

とーやです。

先日、千葉にて開催されたロックバトルにジャッジとして招かれてバトラーを裁いてきました。

真剣に頭を悩ませて、その時のベターなダンサーを選び抜いたつもりです。めっちゃドロー出たけど。

ジャッジ視点で大局的にバトルを見ていてわかったことがあります。それは、決して「技術」の良し悪しが勝敗に結びつくことはないということでした。

「バトルは上手い人が勝つとは限らない!」と頭の中ではわかっていても、バトルで負ける度に「結局上手い人が強いんだ(諦観)」という思考に陥ってしまいます。

これはプレイヤー目線ではそう考えてしまうのですが、ジャッジ目線では決してそうではないのです。

今回は私が感じた、バトルで技術よりも大事な要素を真剣に書き殴ります。

大事なのは「技術」ではなく「環境」

みずタイプの技は天気がのときに使えば威力が上がります。

ほのおタイプの技は天気が晴れのときに使えば威力が上がります。

急にポケモンの話が始まって、不審に思った方もいらっしゃることでしょう。ご安心ください。今あなたの読んでいるものは、とーやの書いているダンスに関するブログ記事でございます。

今回のイベントは15歳以下限定と25歳以下限定の2部門で行われました。オーガナイザーの若手の実力向上と地元を盛り上げようという狙いで企画されてたのですが、こういったパーティション分けされたバトルは、同じ世代のダンサーが集まるわけなので、「こいつよりは俺のほうが上手いやろ!」とか、「この前の借りを返してやるぞ!」みたいな感情が露骨に出てきやすくなるわけです。

その感情を持ったもの同士が予選サークルを形成するとどうなるか。

めちゃくちゃ固くて冷たい雰囲気のフロアの出来上がり!

となります。

これは拒否しようもなく自然発生してしまうのです。そのフロアが出来上がってしまうと、逃れることはできません。この状態のフロアで予選サークルで一人ずつオーディションで踊っていくと、自分の本来のパフォーマンスが発揮しにくくなると考えています。

案の定、普段は素敵なダンスをすることを知っているダンサーたちでも、その空気にあてられて、普段のパフォーマンスが出ていないように感じました(※普段のダンスと比較してジャッジしているわけではないです)。

サークルの予選も進み、後半に差し掛かった頃、あるダンサーが空気を変えます。その人はオンビートを捉えて、しっかりベーシック主体で踊るようなタイプでした。初めは緊張しているようにも見えたのですが、なんと、急にクラブステップであたりを一周しながら、会場全体にバイバイ👋みたいな感じで手を振りだしたのです。「なんや急にコミカルやな」と少し引いた目線で見ていたのですが、そのバイバイにみんな反応して、予選サークルの人のほとんどがそのバイバイに反応して手を振り返したのです。そのレスポンスを受けた瞬間、踊っている本人とそれを含むサークル、なんなら会場全体の空気が一段階明るくなったように感じられました。ずっと住んでいる家の照明をいじったらもう一個上の明るさ設定になったときのような、ちょっぴり晴れやかな雰囲気になったのです。

そのダンサーが踊り終わった後、若干の緊張感を残しつつも、そのムードは続きました。私は迷いなく彼をピックアップしました。

彼は、ベーシックが主体でコミカルな動きを決め手としていたのですが、コミカルな動きって明るく笑い飛ばせそうな雰囲気でないと、すんなり馴染まないと思います。本人はその武器を最大限に生かせる環境を自分で整えて使っていたのです。言うは易く行うは難し。空気を作りに行って大スベりなんてことも容易に想像ができると思います。あの瞬間の、あの音楽だからこそできたわけですが、決して運が良かったというわけではなく、大スベりだったとしてもやり切ることの大事さも同時に痛感した瞬間でした。

予選は「技術の高い人順」という考えは間違いではないですが、正解でもないと考えています。「高い技術をその環境下でいかに発揮できている順」と言ったほうが本質に近いように感じます。

あなたの良さは「観測地点」で変わる

あなたの武器である、ロックダンスやら、リズムメイクやら、フロアやらは、見ている「場所」と「時間」で良くも悪くも見えてきます。見ている人の「観測地点」であなたに対する感じ方が変わるというお話。

今回のバトル形式は、予選サークルと本戦トーナメントに分かれており、予選でピックアップされた人が、本戦トーナメントのシード権を獲得して、予選をピックアップされなかった人たちは、フルトーナメントの一回戦から参戦するという特殊なものでした。なかなか面白いシステム。一回負けてもまだ再起のチャンスがあるのはいいよね。

私が驚いたのは、予選と本戦でダンサーの見え方が全く違うということでした。このシステム上、予選サークルでのムーブも、本戦対面でのムーブも全員分を見ることができるのですが、「本当にさっきと同じ人間か?」というレベルで受ける印象が変わっていたのです。

その理由が流れる音楽が違うからというだけでは足りていないのは明白でした。私の考えでは、予選と本戦で見えている角度と、そのタイミングが印象付けに大きな影響を及ぼしているのだと考えています。正面から見ると「かっちょいいー!」ってなる人も、横から見ると「意外と雑だな…」と感じたり、出てくるタイミングが先行だと「気持ちいい踊りするなぁ」とストレートにムーブを受け取れたり、後攻だと「上手いけど先行のムーブを返せてなくね?」という惜しさを感じたりします。

これは、あなたのムーブが決して悪いと言いたいわけではないのです。受け取っている側の観測地点がそうさせているという話です。

技術を磨くこと、音楽表現を広げることと同じくらいの労力を使って、観測者の視点も考えたらもっと良くなると考えています。手先の精度に難ありと自分で感じているのであれば、それが表に出ないような体の向きを考えるのも良いですし、自分の踊りが勢い爆裂イケイケムーブであれば絶対先行主義を取るのもいいでしょう。これらの逆もまた考えられます。

「そんな技術的思考でダンスしたくない!」とか「ダンスはもっとナチュラルだ!」と言っている、そんな無添加気質のあなたへのメッセージ。その道はイバラの道を100往復してやっとたどり着く場所です。時に技術的、論理的な思考に至った末のナチュラルも存在するというのも、知っておいた方がいいと思います。あなたの言っていることは、病院は論理的で科学的で嫌いと言っているのと一緒です。赤ちゃんのときに病院で予防接種と定期健診を受けたから、私たちはここまで成長してるんですよ?病院に行かずに、ここまで人間が生き延びるってありえませんからね?

”それ”を形にしなくては意味がない

「私はこういうものが好きでして、こういうことが得意なんです!」というのものを主張するのはダンスバトルの大事な部分だと思います。

ジャッジとして、あなたの大切にしているものを最大限理解しているように心がけていますが、それが伝わってこない、見えてこないことも多々あります。もちろん私の見る目がないという要因もあるのですが、あなたの大切にしている”それ”が伝わるような技術と音楽アプローチを、ご自身で努力して磨いていただくことも怠ってはいけないと思っています。

「結局練習するしかないんかい!」って話に落ち着いちゃいそうですけど、ただ技術を磨くのと、伝えるため、共感してもらうために技術を磨くのとでは、その練度が大きく異なると思っています。

あなたの持っている武器は剣ですか?それとも銃ですか?奇をてらったヌンチャクですか?

剣を一生懸命研いだり、銃にしっかり弾を込めたり、ヌンチャクは…まぁ知らんけど、なんか手入れしているのはいいですけど、それを実用的に使う事を考えなくてはその準備に意味はあるんでしょうか。

その武器を最大限生かす環境はどこがいいでしょう?

その武器の弱点を補うにはどういうことに注意すればいいでしょう?

その武器で相手にダメージを与えるにはどのような使い方がいいでしょう?

まとめ

今回は私がバトルジャッジをして、バトルで勝ち上がるために一般的に抑えておきたいポイントを私の解釈で書き殴りました。

こんな風には書いてますけど、本当にみんな良いムーブをしていました。私にモチベーションを与えてくれて本当にありがとうございました。

ジャッジしてるとみんな勝たせてあげたくなっちゃうので、もうやらないかもしれないです。てか、ジャッジってただの審査員なわけで、その場のヒーローになれないのがウズウズしちゃうので私は好きじゃないかもしれないです。

ご精読いただきありがとうございました!

とーや
この記事を書いた人

エンジニア兼ダンサー兼ゲーム配信者しております。
三足の草鞋を履いております。足は二本しかないのでいっつもいっぱいいっぱいです。

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